手や指は、私たちの日常生活で最も活発に使われる体の部位です。物をつかんだり、作業をしたり、コミュニケーションを取ったりと、その役割は多岐にわたります。英語には、こうした手や指に関連した表現が数多く存在し、私たちの行動や態度を表現する際に頻繁に使われています。
Hands down
意味:断然、圧倒的に
説明:何かが疑いなく最高であることを意味します。競馬で騎手が勝利を確信して手綱を下ろす様子に由来すると言われています。
例文:She is hands down the best candidate for this position.
訳:彼女は断然、このポジションに最適な候補者だ。
🔍 深掘り:余裕の勝利を見せつける騎手 19世紀の競馬界から生まれた言葉です。接戦のレースでは、騎手はゴールまで馬の頭を上げさせ、速度を維持するために手綱(reins)をピンと張って「手を上げて」いなければなりませんでした。しかし、圧倒的な差をつけて勝つ時は、ゴール直前でリラックスして「手を下ろす(hands down)」ことができました。そこから「議論の余地がないほど圧倒的」という意味に転じました。
Give someone a hand
意味:手を貸す、助ける / 拍手する
説明:このフレーズには二つの意味があります。一つは誰かを助けること、もう一つは拍手を送ることです。文脈によって使い分けられます。
例文:Could you give me a hand with these heavy boxes?
訳:この重い箱を運ぶの、手伝ってもらえますか?
🔍 深掘り:物理的な「手」か、音としての「手」か 「助ける」の場合は物理的な力を貸すニュアンスですが、「拍手」の場合は「Give a big hand for (someone)!(~に盛大な拍手を!)」のように使われます。ちなみに、一人で手伝う時は「a hand」ですが、大勢で拍手する時も「a hand(一回の拍手喝采)」と単数形で扱うのが一般的です。
Keep your fingers crossed
意味:幸運を祈る
説明:誰かの成功や良い結果を願う時に使う表現です。指を交差させるジェスチャーは、幸運を呼び込むという古い迷信に基づいています。
例文:I have a job interview tomorrow. Keep your fingers crossed for me!
訳:明日、就職面接があるんだ。幸運を祈っていてね!
🔍 深掘り:中指を人差し指に乗せるポーズ この「指を交差させる」仕草は、キリスト教の「十字架」を象徴しています。中世ヨーロッパでは、十字の形には悪霊を追い払い、願いを叶える力があると信じられていました。もともとは二人の人間がそれぞれの人差し指を交差させて十字を作っていましたが、次第に一人で簡単にできるよう、自分の中指と人差し指を重ねる形に簡略化されました。
Get out of hand
意味:手に負えなくなる、制御不能になる
説明:状況が管理できなくなったり、コントロールを失ったりすることを意味します。もともと手の中にあったものが逃げ出す様子を表します。
例文:The party got out of hand when too many people showed up.
訳:予想以上に人が集まって、パーティーは手に負えない状態になった。
🔍 深掘り:「手綱(たづな)」から外れる恐怖 これも競馬や馬車が盛んだった時代に由来します。馬の手綱をしっかりと「手(hand)」の中に握っていればコントロールできますが、それが「手の外(out of hand)」に飛び出してしまうと、馬は暴走し、御者は成すすべがありません。ここから、物事が収拾のつかない事態になることを指すようになりました。
Have a finger in every pie
意味:いろいろなことに関わる、首を突っ込む
説明:多くの異なる活動やプロジェクトに関与していることを意味します。全てのパイに指を入れるという比喩から来ています。
例文:He’s a very busy man – he has a finger in every pie in this town.
訳:彼はとても忙しい人だ。この町のあらゆることに関わっている。
🔍 深掘り:全部の味を確かめたい欲張りさん 焼き上がったパイが並んでいる場所で、すべてのパイの中身を確認しようと一本ずつ指を突っ込んでいる様子を想像してみてください。自分の担当ではないことにまで首を突っ込みたがる様子や、あちこちで利益を得ようとする「多忙すぎる人」や「お節介な人」を揶揄する表現として使われます。
Rule of thumb
意味:経験則、大まかな目安
説明:正確ではないものの、一般的に受け入れられている実用的な原則や方法を意味します。親指を使った大まかな測定方法に由来すると言われています。
例文:As a rule of thumb, you should save at least 10% of your income.
訳:経験則として、収入の少なくとも10%は貯金すべきだ。
🔍 深掘り:親指は「最も身近な物差し」 定規が普及していなかった時代、人々は自分の体を使って長さを測っていました。特に親指(thumb)の付け根から爪先までの長さは約1インチ(2.54cm)とされ、大まかな測定によく使われました。精密な計算ではないけれど、日常生活で十分に役立つ「ざっくりとした知恵」が、この言葉に込められています。
Green thumb
意味:園芸の才能、植物を育てる能力
説明:植物を上手に育てる能力を持っている人を指します。園芸作業で指が緑色になることから来た表現です。
例文:My grandmother has a green thumb – her garden is always full of beautiful flowers.
訳:祖母には園芸の才能がある。庭はいつも美しい花でいっぱいだ。
🔍 深掘り:苔(こけ)のついた鉢を触る手 由来には諸説ありますが、熱心な園芸家が素焼きの植木鉢(苔が生えて緑色になっているもの)を日常的に扱っているうちに、親指が緑色に染まったからという説があります。イギリス英語では「Green fingers」と言うのが一般的です。これに対して、植物を枯らしてしまう人は冗談で「Brown thumb」と呼ばれることもあります。
All thumbs
意味:不器用な
説明:手先が不器用で、細かい作業が苦手なことを意味します。まるで全ての指が親指になったように不器用な様子を表します。
例文:I’m all thumbs when it comes to sewing.
訳:縫い物に関しては、私は本当に不器用だ。
🔍 深掘り:親指が5本あったら…? 親指は力強く物を掴むのには適していますが、人差し指や小指のような繊細な動きは苦手です。「もし5本の指がすべて親指だったら」と想像してみてください。ボタンを留めることも、針に糸を通すことも絶望的に難しくなるはずです。その「もどかしい不器用さ」をユーモラスに表現した言葉です。
Hand in hand
意味:密接に関連して、協力して
説明:二つのものが密接に結びついていることや、人々が協力して行動することを意味します。手をつないで歩く様子から来た表現です。
例文:Economic growth and environmental protection must go hand in hand.
訳:経済成長と環境保護は、密接に結びついて進めなければならない。
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Point the finger at
意味:非難する、責任を押し付ける
説明:誰かを批判したり、責任を負わせたりすることを意味します。指を指して非難する仕草から来ています。
例文:Instead of pointing the finger at others, we should take responsibility for our own actions.
訳:他人を非難するのではなく、自分の行動に責任を持つべきだ。
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Wrap someone around your little finger
意味:誰かを意のままに操る
説明:誰かを完全に支配して、自分の思い通りに動かせることを意味します。小指に巻きつけるように簡単に操れる様子を表します。
例文:She has her father wrapped around her little finger – he gives her everything she wants.
訳:彼女は父親を意のままに操っている。欲しいものは何でも買ってもらえる。
🔍 深掘り:小指一本で動かせる軽さ 最も力が弱いはずの「小指」に、相手をぐるぐると巻き付けて振り回すという比喩です。それほど相手が自分に甘かったり、心酔していたりすることを示します。力ずくで従わせるのではなく、魅力や甘え上手な性格を利用して、相手が喜んで(あるいは気づかずに)自分の思い通りになってしまうという、少し小悪魔的なニュアンスが含まれます。
Get your hands dirty
意味:実際に作業する、面倒な仕事もする
説明:理論だけでなく実際に作業に携わることを意味します。時には困難な仕事や不快な作業も含まれます。
例文:If you want to succeed in this business, you need to get your hands dirty.
訳:このビジネスで成功したいなら、実際に現場で働く必要がある。
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Wash your hands of
意味:手を引く、関わりを断つ
説明:ある状況や問題から完全に離れ、もはや責任を負わないことを意味します。聖書のピラトが手を洗って責任を放棄した話に由来します。
例文:After years of trying to help him, she finally washed her hands of the situation.
訳:何年も彼を助けようとした後、彼女はついにその状況から手を引いた。
🔍 深掘り:聖書の中の「責任放棄」の儀式 新約聖書に登場するユダヤ総督ポンティオ・ピラトのエピソードが由来です。彼はイエスの処刑を望む群衆を止められないと悟った時、自らの潔白を示すために、人々の前で手を洗い「この人の血について、私には責任がない」と宣言しました。「汚れた仕事に関わった手を洗って清める」という行為が、現代では「責任を放棄して関係を断つ」という意味で使われています。
Catch red-handed
意味:現行犯で捕まる
説明:悪事を働いている最中に見つかることを意味します。血のついた手で捕まえられることから来た表現です。
例文:The thief was caught red-handed stealing from the store.
訳:泥棒は店から盗んでいる現場を押さえられた。
🔍 深掘り:中世の法律が生んだ「動かぬ証拠」 この言葉のルーツは、15世紀のスコットランドの古い法律にあります。当時、他人の領地の鹿や牛を殺して盗む「密猟」が絶えませんでした。しかし、犯人が肉を持って逃げた後では「拾っただけだ」「もらったものだ」と言い逃れされてしまいます。
そこで、犯人を確実に処罰するための条件として、**「殺した直後の獲物の血(Red)が、まだ手に付いている(Handed)状態で捕まえること」**が定められました。これが「言い逃れのできない決定的な証拠」となり、現代の「現行犯」という意味に繋がっています。
現代では、泥棒だけでなく、テストでカンニングをしている最中や、隠しておいたクッキーを食べている子供など、日常のちょっとした「現場」に対してもよく使われます。
Wait on someone hand and foot
意味:至れり尽くせりの世話をする
説明:誰かのあらゆる要求に応えて、献身的に世話をすることを意味します。手も足も使って全身で奉仕する様子を表します。
例文:She waited on her sick mother hand and foot during her recovery.
訳:彼女は回復期の母親に至れり尽くせりの世話をした。
🔍 深掘り:「手」と「足」の両方を差し出す奉仕 この表現は、14世紀ごろから使われている非常に歴史のあるイディオムです。ここでの「Hand and foot」は、世話をする側が**「自分の手も足も、すべてを相手のニーズのために捧げる」**という様子を表現しています。
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Hand(手): 食事を用意したり、身の回りのものを整える
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Foot(足): 相手のためにどこかへ行ったり、使い走りをしたりする
というように、文字通り全身全霊で仕える姿を指します。
現代では、例文のように病人の看病や介護といった「純粋な献身」を指すこともあれば、わがままな相手にこき使われているような「奴隷的な奉仕」を皮肉を込めて表現する場合にも使われます。例えば、**”I’m not going to wait on you hand and foot!”(私はあんたの召使いじゃないんだからね!)**といった具合です。

こんにちは、ゆぶろぐです。
言葉には、辞書には載っていない「空気」があります。 「どんな表情で?」「どんなトーンで?」 そんな英語の「空気」ごと味わえるよう、フレーズと共に映画のワンシーンを紹介しています。あなたの英語学習が、もっとドラマチックなものになりますように。
本名、吉成雄一郎(よしなりゆういちろう)。株式会社リンガポルタ代表取締役社長。東京電機大学教授、東海大学教授を経て現職。
