家族というテーマは、世界中の言語や文化で特別な意味を持ち、英語においても例外ではありません。家族にまつわるイディオムには、愛情深い絆を讃えるものから、避けられない対立を描くものまで、人間関係の本質が凝縮されています。これらの表現の多くは何百年も前から使われており、時代を超えて受け継がれてきた知恵や価値観が反映されています。中には意外な由来を持つものや、現代では本来の意味とは異なる解釈で使われているものもあります。今回は、そんな家族をテーマにした英語イディオムを10個厳選し、それぞれの深い意味や興味深い背景を探っていきます。これらの表現を通じて、英語圏の文化における家族観や、言葉に込められた感情の豊かさを感じ取っていただければ幸いです。
Blood is thicker than water
意味:血のつながりは水よりも濃い
説明:家族の絆が他の関係より強いことを表す最も有名なイディオムの一つですが、実は興味深い議論があります。一説には、元々の完全な表現は「契約の血は子宮の水よりも濃い」で、選んだ仲間の方が血縁より大切という逆の意味だったとも。現代では家族最優先の価値観を示すのに使われますが、文化によって受け止め方は様々です。使用時は、状況によっては家族偏重と受け取られる可能性もあるため注意が必要です。
例文:She always helps her brother in difficult times because blood is thicker than water.
訳:彼女は困難な時でもいつも兄を助ける。血のつながりは水よりも濃いから。
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Like father, like son
意味:似た者親子、この親にしてこの子あり
説明:ラテン語の「Qualis pater, talis filius」に由来する古い諺で、14世紀から使われています。興味深いのは、良い特徴にも悪い特徴にも使える点です。「Like mother, like daughter」という女性版も存在します。単なる外見の類似ではなく、性格、趣味、行動パターンなど内面的な類似を指すことが多く、遺伝と環境の両方の影響を暗示しています。皮肉を込めて使われることもあるため、文脈とトーンに注意が必要です。
例文:He loves fishing just like his dad. Like father, like son.
訳:彼はお父さんのように釣りが大好きだね。似た者親子だ。
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A chip off the old block
意味:親によく似た子
説明:17世紀から使われている表現で、元々は木工技術から生まれました。古い木材(old block=親)から切り出された小片(chip=子供)は、同じ材質を持つという比喩です。「Like father, like son」よりも温かく親しみのあるニュアンスで、ほぼ常に肯定的な意味で使われます。才能や良い性質を受け継いだ場合に用いられ、特に第三者が親子を比較する際によく使われます。親の誇りを表現する際にも適しています。
例文:She’s a great musician, just like her mother. A chip off the old block.
訳:彼女は素晴らしい音楽家だ、お母さんと同じね。親によく似た子だ。
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The apple doesn’t fall far from the tree
意味:子は親に似る
説明:重力の法則を比喩にした諺で、ドイツやロシアにも類似の表現があります。リンゴが木の根元近くに落ちるように、子供は親から遠く離れることはないという自然の摂理を表します。「Like father, like son」や「A chip off the old block」と似ていますが、より中立的で、時には否定的な特徴の継承を指摘する際にも使われます。遺伝的要素だけでなく、育った環境の影響も含意しており、良くも悪くも親の影響は避けられないという現実を示します。
例文:Both father and son are excellent chefs. The apple doesn’t fall far from the tree.
訳:父も息子も優れた料理人だ。子は親に似る。
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Home is where the heart is
意味:心がある場所が家
説明:19世紀のローマの格言「Ubi amor, ibi domus(愛があるところに家がある)」に由来するとされ、物理的な建物ではなく、感情的なつながりこそが「家」を定義するという深い哲学を表しています。移民や出張の多い人々、遠距離恋愛をしている人々にとって特に共感を呼ぶ表現です。家族がいる場所、愛する人がいる場所、心が安らぐ場所が真の「ホーム」であり、豪華な家よりも大切なのは誰とそこにいるかという価値観を示します。
例文:No matter where I travel, I always miss my family. Home is where the heart is.
訳:どこに行っても家族が恋しい。心がある場所が家だ。
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It runs in the family
意味:家族に遺伝する
説明:遺伝的特徴だけでなく、家族内で代々受け継がれる傾向や習慣を幅広く指します。才能(音楽的才能、運動能力)、身体的特徴(髪の色、身長)、病気への傾向、さらには職業選択や趣味まで含まれます。興味深いのは、遺伝子だけでなく環境や教育の影響も含意している点です。「It’s in my blood」という類似表現もありますが、こちらはより先天的なニュアンスです。家族の伝統や特徴を誇りを持って語る際によく使われます。
例文:All of them are good at singing. It runs in the family.
訳:彼ら家族はみんな歌が上手い。家族に遺伝するね。
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Family ties
意味:家族の絆
説明:1980年代の人気テレビドラマのタイトルにもなった表現で、血縁や結婚によって結ばれた家族メンバー間の強い結びつきを指します。「Ties」という言葉には、物理的な紐だけでなく、義務、責任、愛情、忠誠心など多層的な意味が込められています。この絆は時に重荷となることもありますが、困難な時期を乗り越える原動力にもなります。「Family bonds」も同義語ですが、「ties」の方がより伝統的で、解くことが難しい強固な結びつきを感じさせます。
例文:Despite their differences, their family ties remain strong.
訳:意見の違いはあっても、彼らの家族の絆は強い。
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At each other’s throats
意味:激しく争う
説明:動物が戦う際に相手の喉元を攻撃する本能的行動から生まれた比喩で、非常に激しい口論や対立を表します。興味深いのは、家族や親しい間柄でこそ使われることが多い点です。これは、親密な関係だからこそ激しくぶつかり合えるという逆説を示しています。一時的な口論から長期的な対立まで幅広く使え、「fight like cats and dogs」という類似表現もあります。皮肉なことに、このイディオムは対立の激しさと同時に、関係の親密さをも暗示します。
例文:The siblings are always at each other’s throats, but they really do love each other.
訳:その兄弟はいつも激しく争っているけど、本当はお互いを愛している。
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Skeletons in the closet
意味:隠された秘密や恥
説明:19世紀イギリスで生まれた表現で、文字通りクローゼットに骸骨を隠すという不気味なイメージから来ています。イギリス英語では「cupboard」を使います。過去の犯罪、スキャンダル、恥ずかしい出来事など、暴露されることを恐れる秘密を指します。興味深いのは、「every family has skeletons」という言い回しがあるように、完璧な家族など存在しないという現実的な人間観を反映している点です。「有名になると skeleton が出てくる」という文脈でよく使われます。
例文:Every family has a few skeletons in the closet.
訳:どの家族にも隠された秘密や恥が少しはある。
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Family feud
意味:家族間の長引く争い
説明:シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」のモンタギュー家とキャピュレット家の確執や、アメリカのハットフィールド家とマッコイ家の実在した抗争など、歴史や文学で描かれてきた深刻な家族間対立を指します。単なる口論ではなく、何世代にもわたって続く根深い不和が特徴です。遺産相続、土地、家族の名誉などが原因となることが多く、「feud」という言葉自体に「血で血を洗う」ような激しさが含まれています。人気クイズ番組のタイトルにもなっています。
例文:The family feud started years ago and still hasn’t been resolved.
訳:家族間の争いは数年前に始まり、未だに解決されていない。
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こんにちは、ゆぶろぐです。
言葉には、辞書には載っていない「空気」があります。 「どんな表情で?」「どんなトーンで?」 そんな英語の「空気」ごと味わえるよう、フレーズと共に映画のワンシーンを紹介しています。あなたの英語学習が、もっとドラマチックなものになりますように。
本名、吉成雄一郎(よしなりゆういちろう)。株式会社リンガポルタ代表取締役社長。東京電機大学教授、東海大学教授を経て現職。
